せんくらの楽しみ方

■ 五嶋節(講演)

(1)五分五分 — 2006年08月20日

寄る年波には勝てず、敏捷性も緩やかになって、動作も遅くなるから、年々忙しさは倍増する。そういう理由で、このところめちゃくちゃ忙しく、センクラのブログは開けたこともありません。チケット販売に多少なりとも影響するかもしれないでしょと、7日分を書くように迫られ、それならば、まず、「残暑お見舞い申し上げます」から始めなくちゃ。

せんくら出演者の殆どの方が演奏家でいらっしゃる中で、私ができることは一体何でしょうねぇ?タイトルは往々にして客集めのキャッチフレーズに過ぎないので、「五嶋みどり・龍 二人の天才を育てたが・・・」は、実にあほらしい。

私の子供はいくつになっても一番心の開ける、反抗的な、世話の焼ける分身。お蔭様で二人の子供達を一言で皆様に印象付けるとすれば、『トンビが鷹を産む』以上に上出来な子供達です。ゾッとするような青少年の問題にも今のところ手を染めていないし、ボランティア活動にも意欲的に取り組んでいるし、頭も悪くはないと、まぁ、この3拍子が揃っても“天才”と言うには羞恥心がなさすぎですよ。

現在の時点では会場で話すことも思い当たらないので、2回のうち1回は、精神科のお医者様のところへカウンセリングに行くがごとく、お集まりいただいた観客の皆様に私の愚痴を聞いてもらって、私自身がすっきりする、その後で自己嫌悪に陥る、のパターンで逃げ切り、2回目の講演は、“天才児を育てた母親”である私に、イジメさながらの質問をしていただき、皆様の鬱憤も少々は晴らしていただいて、五分五分といきましょうよ。

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(2)ニューヨーカー — 2006年08月21日


NY街角での節さんの後姿(真ん中)
なんとアメリカ(ニューヨーク)生活も瞬く間に23,4年?経ちました。すっかりニューヨーカーです。ニューヨーカーというのは、要するに「ニューヨークという土地で、人種、言語、文化の異なる人達が自分のリズムで生活をするのを阻まれない人間」というニュアンスだとすれば、私こそ年季の入ったニューヨーカーですね。

最近になって、アメリカで教育された私の子供達を知りつくしていたつもりが、大きく覆される事柄に何度か遭遇しました。「NYこんなはずじゃなかった物語 −進行形−」、なんて大げさですか?

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(3)勉強会 — 2006年08月22日

前回帰国した際に、3日間、ヴァイオリンを真剣に学ぶ小学生から大学生までの子供達とその親に会う機会を私のために設けていただきました。ヴァイオリンを弾いている姿は全員愛おしく、子供を見つめる親御さんの心が丸ごと伝わってきたせいか、3日目が終わったときにはこちらが疲労困憊で声もかすれるくらいでした。

こんな恵まれた経験をさせていただいたことに感謝すべきはずなのに、なぜ幸せに感じられなかったのか、と考え込んでしまいました。その子供達の将来と我が子の歩んでいる道が無意識に重なってしまい、いろんな思いに駆られ、無視できない哀しみの中に自分を置いてしまったからではないかと。(悲劇のヒロインになりたがりやのババアのつぶやき。)

もともと何のためにこういう機会を作ってもらったかと言うと、私が親というだけで、子供の将来に大きく関与することだけに喜びを感じてはいけない時期が訪れたことを親子の間で充分に理解したからです。そこで、私の残る人生をどう生きていくかのヒントを少しでもクリアにするためだったのです。

こういう時期がくれば、ビルのお掃除オバさんとかレストランの皿洗いになって、物を美しくするのに精魂を込めて、疲れ果ててベッドにつく時は、気に入った本とかビデオに囲まれて幸せと感じる日々を想定していたのです。ところが、このアイディアを母に言いますと、「世間をわかっていない。あんたの年になって誰が雇うか!」と一笑されました。

なるほど、こうなったからには“無料相談室”でも開いて、お客さん達と喜怒哀楽を分かち合って、運動不足は犬の散歩で解消して、一生を終わるかなという計画に切り替えました。それには、自由度で言えば、語学的にも人種的にも日本が一番。“無料相談”と言っても何しろせんくらのタイトルにもこれしかないという“天才二人”を育てた親ですから、その手の相談が多いのではないか、ということで、この勉強会をしていただいたわけです。

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(4)クライマックス — 2006年08月23日


ポッドキャスティング収録中の五嶋節と龍
「人生は小説よりも奇なり」、私の人生のクライマックスはいまだ見えません。それは、昨日にもあったし、一昨日、十年前にもあったような気がします。みどりはご存知のように三十○歳。龍は18歳。

優しい子供たちに育ってくれたと言えないことはない。が、会話の途中で、全身の血が一瞬にして足元の深いところに堕ちる瞬間もあります。二人の子供達もきっと私の発する言葉から同じような思いをしていることでしょう。

と、同時に、こんなところでブログに登場できるのも、常に「みどりさんのお母さん」、「龍ちゃんのお母さん」と前置詞つきで椅子を勧められるのも感謝しています。「子の七光り」とでも言うのでしょうか。これがなかったら、全く私の生きてきた残骸はありませんね。

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(5)相談室 — 2006年08月24日

社会の中で出来るだけ多くの方面で経験を重ねることによって、周囲の人の気持ち—焦燥、幸福、絶望、希望といった思いを汲み取ることができるようになる、と、もうすぐ親の手元を離れていく息子に、理解させようとしています。私の経験も踏まえて、相手が誰であろうと、彼の短い人生経験の中でも自分が受けた痛みを利己的に捉えず、相手の気持ちを慮って欲しいと願わずにはおれません。

「そもそも何故戦争をするのか」と他愛無く質問しますと、息子からは文献のドラフトのような答えが返ってきます。私が知りたかった答えは、「勝つため」とか「幸せになるため」とかシンプルなものだったのだが、理屈を並べたてる。「恋は盲目」と言うけれども、「盲目になるのは恋だけかね?」というような質問を投げかけたりもしています。

また、アメリカでも日本のように家庭内で起こる最悪のケースの事件がたくさんありますので、アメリカで教育された龍もみどりも「日本のそういう事件を見てどう感じるか?」とか、「音楽に携わってきて後悔していないか?」などの質疑応答も、私の無料相談室の資料の一つとして蓄えています。

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(6)子育ては苦しみ? — 2006年08月25日

日本では特にこのところ愛犬家が増えているそうですね。心の対象が犬にむいちゃっているわけ?

最近、子供を育てることは“喜び”というより“苦しみ”に属するものだと言われているようです。アメリカでも同じです。少子化問題が深刻化するのもこの辺が一番のポイントだと思います。

教育費、養育費が収入に見合わないほど高くて、政府としても、そういう状況を少しでもマシにしようとしている姿勢は取り続けていただくとしてですねぇ。この続きはせんくらで。

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(7)御質問大募集 — 2006年08月26日

初日にも申し上げましたように、私と参加してくださる方々がご満足していただける会にするには、と策を練っておりまして、何でしたらこのブログを見てくださった方が予め「あれを知りたい。これを知りたい」と言って下されば、今回は誠に申し訳なく無料ではございませんが(1,000円相談室)、ご相談に乗りますので。質問が多ければ、1回目からQ&AでGO! 
では、皆様にお会いするのを楽しみにしています。

五嶋節

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ということで、五嶋節さんへご質問ある方は、次のアドレスまでどしどしお寄せください。
mails@sym-tokyo.com
当日仙台にいらっしゃれない方でも結構です。(平井)

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